羊と中道者


一幕
二幕
三幕
四幕
五幕
六幕
七幕
八幕
九幕
十幕
十一幕
十二幕
出演人物







一幕

 黒の板塀に囲まれた一軒家。
 砂利が敷き詰められた庭先で、塀を背に盆栽台が置かれている。
 台に腰かけているのは、一鉢きりだ。
 “それ”は堅い身をよじり、天へ伸びている。
 枝分かれした身体の先にあるのは、研ぎ澄まされた剣の群れ。
 朽葉色の鉢にその根を浸し、悠然とそこに在る。
 五葉松だ。
 関東において姫小松と称されるそれは、堅固であり、しかし柔和である。
 そして松の眼前、砂利の上に髪を高く結わえた青年が立っている。
 彼の身を包むのは、堅い空気と、武者鎧を思わせる紺色の戦闘用学生服だ。
 青年は小太刀を逆手に構え、松と対峙していた。
 細面に切れ長の瞳。
 鋭利な雰囲気を漂わせる青年は、固く口を結び、射抜くように相手を見つめる。
 松は昼下がりの陽光をゆるりと受け止め、相対する青年に無言を送る。
 彼と松の間に在るのは、剣戟の響音。
 それは二人にしか聞き取れない。
 青年が不動で放つ小太刀の軌跡は、全て相手に届く前に霧散していく。
 額に力が籠もるが、柄に加える力はそのままだ。
 青年は更に軌跡を生む速度を増した。
 十の軌跡が散れば、百の軌跡を。
 百の軌跡が消えれば、千の軌跡を。
 千の軌跡が流されれば、万の軌跡を。
 無数の軌跡を生み落とし、解を求める。
 そして至るのは、
詞変(ワードアクセル)。八万詞階の遺伝詞よ」
 一閃。
 神具として振るわれた小太刀は、松を下から上に撫で上げる。
 斬撃によって生まれた風が、松葉を揺らした。
 幾つかの松葉が散り、消え、流された。
 五行で剪定を行った青年は、時間をかけて息を吐き、心を落ち着かせる。
「失敗はない。だが、速さもない」
 青年のものではない声が、青年の背後で発せられた。
 青年は身体を反転させる。
 藍色の作務衣を着た総髪の男が、腕を組んでそこにいた。
「父上」
「急な来客があってな。一つ頼まれてはくれんか、景松」
「はい」
「うむ。私の代わりに、これを受け取ってきてくれ」
 青年の父親は、青年に二枚の紙を手渡す。
「引換券と――」
「地図だ。そこには疎いだろう」
「はい、助かります。それと、今日の夕食の材料も買って参ります。豆腐を切らしていたので」
「うむ。では頼んだぞ」
「はい」
 父親が家の中へ姿を消すのを見送ってから、青年――梶原・景松は嘆息。
 己の盆栽に笑みを向け、
「私はまだまだ未熟だな、緒ノ姫」
 松の銘は緒ノ姫。
 樹齢十七年。青年と同じだ。
 緒ノ姫は景松に無言を返した。





二幕

 JR三ノ宮駅東口。
 二階、三宮ターミナルホテル前通路。
 景松は今、雑踏の中を流されていた。
 見えるのは、無数の音色だ。
 弾んだ音は景松を取り込み、居心地の悪さを与える。
 ……慣れないな。
 そう思いつつも、波に対して果敢に挑む。
 苦労と共に前進。
 すると前方に、見慣れた騒音がいた。
 騒音は他の音に掻き消されず、己の音を響かせる。
「やっほー景やん。珍しーなー、あんたがこんなところに。買い出し?」
 音の海から首から上だけを覗かせ、騒音が言った。
 景松は波の隙間から答える。
「父の使いだ」
 僅かな間が生まれた。
 騒音は首を傾げながらも、景松に接近。
 ようやく二人は互いの全身を視認できるまでに近づいた。
 アイボリーのフリルタートルに、黒のカットソーワンピースという出で立ち。
 ダークブラウンのロングブーツが、通路のタイルを踏み鳴らす。
 その動きで、周囲の音を穿つ。
 音そのものに大きさはない。
 しかし、道行く音が彼女を視界に捉え、動きを遅らせる。
 その結果に、景松は内心で感嘆。
 ……存在の音質、とでも言うべきか。他とは違うな。
 騒音が黒目がちの瞳を景松に向けていた。
 景松はその騒音を知っている。
 有馬・マリア。
 人狼の少女だ。
「乳の使い? お堅い忠臣系の男かと思とったけど、意外にそういうとこあるねんな」
 言葉の意味を幾度か咀嚼したが、理解できなかったので景松は無視。
 相手に疑問を送る。
「そちらはどうした」
 マリアは腰に右手を当て、左手で天を指す。
「うちは狩りや」
 言って、マリアが笑う。
「――ああ、今宵は満月か」
 僅かに思案し、景松が頷く。
「そ。せやから燃えたぎる闘争本能をぶつけに行くんや。ゲーセンに」
 薄らと、攻撃性を思わせる音色がある。マリアの持つ色だ。
「ゲーセン……。ふむ、聞いたことがある」
「行ったことないんかい!」
 マリアは左手を下ろす動きで景松にツッコミ。景松は打撃を甘んじて受ける。
 驚きの色が、攻撃の色を塗り潰していた。
 色とりどりに姿を変えていく騒音に、景松は居心地の良さを感じていた。
 そんな油断からか、不用意に口走ってしまう。
「そういっことには疎くてな」
 マリアは、ふむ、と呟き、
「……あんた、用事終わったら暇?」
「夕方まで予定はない」
「よし、んならうちに付き合い。社会見学や」
 当然の帰結だった。
 それが有馬・マリアという少女の生き方だ。
 有り難いことだ、と景松は思う。思うが、
 ……それを口にしては彼女の価値が下がる。
 彼女は感謝を求めてはいない。
 故に、答えはこうだ。
「確かに、守護する土地を把握しておくことは重要だな。宜しく頼む」
「あんた、ホンマかったいなぁ……。まぁええわ。さっさと用事済まそか。地図見して」
 景松の言葉も聞かず、マリアは紙をひったくり、目を通す。
 何気ない動きだったが、景松は完全に虚を突かれていた。
 不覚。
 梶原・景松は、有馬・マリアに対して完全に無力だった。
 彼女の拍詞に、飲み込まれてしまう。
 ……だから気安いのかもしれん。
「ああ、やっぱり店か。ふぅん、そうなんかー。大人の階段スキップするねんな、景やん」
「……なにがだ?」
 景松にとって、今日のマリアの発言には不可解な部分が多い。
 それは今日に始まったことではなかったが。
「ええってええって。うちそーゆーの気にならん方やから。ほら、橋渡るで」
 マリアに急かされ、景松は足を進める。
 気がつけば、マリアに手を引かれていた。
 またもや不覚。





三幕

 JR三ノ宮駅から、さんプラザ、センタープラザの前を過ぎれば、それは見えてくる。
 センタープラザ西館。
 複数の商業施設が、館内に所狭しと詰め込まれている。
 館内通路の前に口を開いた店舗から覗く色は様々で、そのどれもが鮮やかだ。
 幾つかある店舗のうちに、景松とマリアの姿があった。
 レジの前に立つ景松は、店員に引換券を渡し、“それ”を受け取った。
「なんだこれは!?」
 景松の叫びが、店内に木霊した。
 店内からの視線が景松に集中する。景松は、しまった、というように顔を伏せた。
 景松の手にある“それ”を見たマリアは、首を傾げる。
「いやエロゲやろ?」
「エロゲですね」
 景松にゲームを手渡した女性店員も断言した。
「エロ……ゲ?」
 “それ”は成年向けのPCゲームだった。
 パッケージにアニメ調の全裸女性が描かれていた。
「つまりエッチなゲームですね」
「なんだと!?」
 女性店員の説明に、景松は愕然とする。
 父上ぇ――――!!
 ――景松・心理技能・発動・感情抑制・成功。
 叫びたい気持ちを、景松は技能で抑え込む。そして高速で思考する。
 もしここで叫べば、父の名が地に落ちる。それは絶対にしてはならない。
 景松の父は数年前からこの土地に工房を構えていた。
 自宅も兼ねた工房だ。決して大きくはない。
 広報活動など夢のまた夢。
 そうなると、地元の評判がモノを言う。
 だからここは沈黙が正しい選択だ。
「あんたおっぱい神の使いとか言うてたけど、パッケ見る限り尻系やでこのゲーム」
 マリアがパッケージの全裸女性の尻を指差しながら言った。
「父親の使い走りだっ!」
 叫んだ。
 技能で感情を抑える暇もなかった。
 だが景松に後悔はなかった。
 さらに景松の疑問は氷解した。単なる聞き違えだったのだ。
 人混みの中での会話に、さらなる習熟を要するものと景松は判断する。
「ああ、なるほどな。了解了解」
 マリアが神妙に頷いた。
「わかったか」
 聞き違いなど、よくある話だ。
「そら女の子に買うとこ見られたら気まずいもんな。そういうことにしといたるわ」
「理解していないな貴様!」
 意図の取り違えも、よくある話だった。
「しっかしあんた、プレイヤーの狼系女神が全裸で闊歩しながら世界に溢れる露出狂のナニを筆で検閲入れてくエロゲって、どんな趣味しとるねん。
 さすがのうちも身の危険を感じるで」
 マリアは景松との間に距離を作る。何故か頬が上気していた。
「私の話を聞けぇー!!」
 叫ぶ景松の肩を、女性店員が叩く。
 助け舟か、と期待を込めて顔を向けた景松だが、
「お客さん、どういうプレイか知らないけど、レジの前で騒がれるとお姉さん困るんだけどな」
「申し訳ありません。しかし違うんです、私は断じて――」
 突然衝撃が景松の頬を襲った。
 完全に意識の外からの打撃で、景松は無防備にそれを受けた。
 衝撃は景松に痛みと驚きを与える。
 振り返れば、泣き顔のマリアがこちらを睨んでいた。
「あんた、みっともないで!
 エロゲ買うとこ見られたくらいでなんや!
 父親のせいなんて嘘吐いて、店で騒いで!
 それでも神戸圏副長補佐の梶原・景松か!! ……梶原・景松か!!」
「フルネームを叫ぶなそれも二度! ええい、来い!」
 景松はマリアの手を引き、店の外へ引きずり出そうと試みる。
 しかしマリアは跳ねるように身を引き、
「――ひっ」
 女性店員はレジに備え付けられた電話の数字ボタンを驚異の指裁きで速射。
「もしもし警察ですか?」
「理不尽――――!」
 景松の叫びが、店内に木霊した。





四幕

「こう、か」  緊張を帯びた声で、景松は問うた。
 それに答えるのはマリアだ。
「……もっと奥や」
 彼女に緊張した様子はない。
 正確に彼我の距離を計算し、景松に指示を飛ばす。
 景松はマリアの目を見、頷きを一つ。
「参る」
 マリアは固唾を呑んで見守る。
 そして動きが生まれた。
 下に向かって突き刺すような動きだ。
 速度はなく、緩慢な動きで獲物を狙う。
 動きは期待を生み、マリアはたまらず声を上げた。
「ハ、ハマったで……! そう、次はそのままゆっくり……」
 今度の動きは、引き上げるものだ。
 だが、二人の予想を外れた動きを見せるものがあった。
 それは二人の意思に反し、挟み込んだ獲物を取りこぼしたのだ。
「むっ、外れたぞ」
 景松はマリアの方を見た。
 彼女は怒りと失望の遺伝詞を纏っていた。
 マリアは景松を睨み、吼える。
「なにやってんねん! 童貞! 童貞! 派遣武士! 童貞!」
「派遣は関係ないだろうが派遣は!」
 反射的に否定したことで、何かを肯定してしまったことに気づいたが、既に遅い。
 マリアがメモ帳に何かを書き込んでいるが、景松は視界から外して現実から目を逸らす。
 逸らした先には、今まで自身が向き合っていたものがある。
 ……名はUFOキャッチャーと言ったか。強敵だ。
 有馬・マリアはこれで空間把握能力を鍛えているのだろう。大した女だ。
「ほれ、はよ次のコイン入れんかい」
 現実に目を向ければ、マリアがコイン投入口を指で叩いている。
 その音はゲームセンター内に詰まった騒音の間をすり抜けるようにして、景松の耳へ届く。逃げられない。
「何故私が……」
 既に投入金額は三千円を越えていた。
 マリアは笑顔で、
「別にうちは『マリアさんが見られまくってる 〜恥辱! エロゲショップに連れ込まれて強制羞恥プレイ編〜』をメールで全件送信してもええけど。
 ちなみに『見られまくってる』は『乱れまくってる』にかかってるんやで」
 景松は無言で百円玉を二枚投入。
 投入口に吸い込まれていく百円玉に、死地へ赴く戦士の後姿を見た。
 ……お前達の死は無駄にしない。
 自身に喝を入れ、UFOキャッチャーと対峙する。
 百円玉を吸い込んだことでUFOが元気になり、音と光を周囲に吐き出す。
 狙うのは、両脇に小さな穴の開いた縦長の箱だ。
 箱の前面は透明になっており、中には直径十六センチの水着少女が詰められている。
「ところでこれはなんだ」
 ボタンを操作しつつ、隣でガラスケースに顔を貼り付けているマリアに尋ねる。
「夕方にやってるアニメのフィギャー。うちの子供らの土産にと思って」
「いいのか教育上」
 箱の中から覗く水着少女は、健康そうな肌を惜しげなく露出させている。
「水着にはモザイクかからんからなぁ」
 言いつつ、マリアは半眼で景松が提げたビニール袋を見る。
「だからこれは違うと……」
 景松がマリアの方へ顔を向けて抗議している間に、UFOキャッチャーでは一つの結果が示されていた。
 箱詰めの水着少女は、ガラスケースの中で無様に横たわっている。
 捕獲失敗。
「うんうん。わかったからコイン投入しよかー」
「わかってないなこの女! こらっ、メール送信はやめろ! ……くっ」
 再び百円玉を二枚投入。
「五百円玉突っ込んだ方がお得やのに」
「次で成功するかもしれん!」
 突然、マリアは景松の手を掴んだ。
 不意の出来事に対応できなかった景松を無視して、マリアは一方的に告げる。
「……アンタは賭け事したらあかんで。うちと約束や」
 勝手に指切りを結び、
「さあ行って来い景やん!」
「言ってることが無茶苦茶だぞ!」
「さっきの娘は倒れとるから、次はあそこの半裸美女狙いな」
 マリアの無視に、景松は慣れ始めていた。
 このままではいけないと思いながらも、ボタンを操作する手は止まらない。
 景松は何故彼女がここに自分を連れてきたのかを考える。
 浮かぶ思考は、思い上がった考えだ。
 彼女にとっては、今日のことも些細なことの一つなのだ。
 余所者であり、部外者であり、中道者である私は。
 彼女にとっては、ただの梶原・景松だ。
「穴や! 穴に爪をつっこむんや!」
 余韻が無残に引き裂かれた。
「わかったから叫ぶな!」
 両手を振り上げて騒ぐマリアを制しつつ、ボタンを操作。
 UFOは半裸美女を閉じ込める箱へ向かって垂直落下。
「うひょー! きたきたきたきたー! 半裸美女カモン! おお、神よー!!」
 ついには踊り始めたマリアを横目に見つつ、景松は引き上げられていく半裸美女を目で追う。
「テンション上がりすぎだ狼女。というかさすがにこれは駄目だろう色々と」
 箱の中で己の身を抱くようにして立つ半裸美女は、哀しげな瞳を景松に向けている。
 そんな目で見るな、と呟いた景松に対し、半裸美女は一つの動きを見せた。
 左右に揺れたのだ。
 驚き、目を凝らす。
 揺れは止まらずに次第に激しさを増していき、
「落ちたー! 半裸美女飛び降りたー!」
「これは……地震か!」
 地の底から這い上がってくるのは、遠雷の響きだ。
 騒音を飲み込む轟音が、競り上がってくる。
「きゃっ」
 悲鳴と共に、マリアが体勢を崩した。
 景松は咄嗟に手を伸ばし、マリアの腰をホールド。
 そのまま引き寄せて倒れるのを防ぐ。
「このところ多いな。……有馬?」
「――と、ごめ。あは」
 一瞬、マリアの顔が曇った。しかし強引に笑うことで感情を塗り替える。
 歪な色彩だ。直視するには痛みを伴う。
 それでも景松は目を逸らさない。
「寄り掛かっても構わん。だが役目を果たせ副長」
「う、あ、うん」
 マリアの言葉に力はない。
 同じように周囲の騒音も変質していた。
 不安と恐怖が場を支配している。
 それらが何かを生み出す前に、振り払う必要がある。

 ――壊すことしか知らぬ五行師が、何を為そうというのだ。
 諦めを帯びた自問に刃向かうように、景松は己の神具に手を伸ばす。

 ――怯える副長を見られては、総長連合の名折れか。
 否、と呟き、マリアの身体を強く抱く。

 ――この少女に、母の姿を重ねているのだな。
 景松の足元に、赤い雫が落ちた。

 雫は景松の唇から這い出ている。
 痛みで雑念が消え、思考はクリアに。
 視界に映えるのは、解を求めて走る幾条もの軌跡。
 刻むべきは、模範なる解の、さらに上を行く解。
「詞変。八万詞階の遺伝詞よ」
 神具の切先が、マリアの胸元へ滑り込む。
 破壊の矛先は、マリアを覆う感情だ。
 研ぎ澄まされた神経は、マリアの怯えだけを破壊するはずだった。
 しかし、景松の神経はその感覚を急激に失った。
 神具を通して、マリアから這い上がって来るものがある。
 それが、景松から感覚を奪っている。
 慣れない、しかしかつて味わったことのある感覚の喪失だった。
 遺伝詞の逆流だ。
 破壊の力を受けた怯えが、
 青黒い霧となって放射状に飛散するのを見届け、
 景松は現実の世界から引き剥がされた。





五幕

 月がある。
 返り血を浴びたように、赤い月だ。
 月の下にあるのは、荒廃した街だ。
 粉々に潰れた家屋に、
 むせ返るようなガスの臭いに、
 思わず耳を塞ぎたくなるような悲鳴。
「これは……マリアの記憶、のはずだが」
 景松は、この景色を知らない。
 しかし、マリアの生い立ちを知る景松は、すぐに思い至る。
「神祭の記憶か!」
 だが、彼女は神祭前後の記憶を持たないはずでは?
 景松の心の内に、小さな疑問が生まれる。
 疑問に答えるのは、景松だ。
「地震のショックで、過去の記憶が蘇っているということか?」
 答えは断言ではない。
 疑問だけが残る。
「赦してくれ、娘よ」
 背後で、男の声が響いた。景松は振り返り、相手を見た。
 色無地を着た中年の男が、片手で二メートル超の矛を構えていた。
 さらに男の背後では、赤い柄の長槍が、同じく赤い熊を地面に縫いつけている。
 景松の視線は、赤い破壊のオブジェではなく、男が持つ矛に固定。
「なぜ、芦屋の矛をこの男が……!?」
 黒と白の螺旋模様を持つその矛を、景松は知っている。
 数ヶ月前に共闘した神戸圏守護役が使っていた、その矛を。
 男は疑問に答えず、矛を構える手に力を込める。
 景松は促されるように、視線をずらした。
 矛の先、景松との間で割れた大地に伏すのは、一人の少女だ。
 少女を彩るのは、鮮明な赤。
 空に浮かぶ月と、同じ色彩。
 時と共に彼女を赤く染めるのは、少女の背に広がる巨大な創傷だ。
 その少女の傷を塞ぐように、傷だらけの“何か”が覆い被さっている。
 景松が“何か”の正体を確かめるよりも早く、男は動いた。
 速さが、駆け抜ける。
 矛は“何か”ごと少女を貫いた。
 同時に、男が言葉を放つ。
「――――!」





六幕

 唐突に、景松は現実の世界に引き戻された。
 取り戻した感覚で、マリアから神具が引き抜かれていることを悟る。
 疑問や戸惑いよりも早く、己の苦い記憶が蘇るよりも速く、視線を動かす。
 腕の中、至近距離にある顔へ。
「ど、どないしたん景やん」
 有馬・マリアはそこにいた。
 それがどれだけ有り難いことかを、景松は身をもって知っている。
 だから、
「おおう、なんやなんや」
 顎の下でマリアが慌てるが、景松は無視。
 感情の整理は一秒だ。
 一秒でマリアを解放する。
「なあ、さっきうちにナニしたん? ここ数秒の記憶飛んでるねんけど」
 マリアが首を傾げている。
「覚えていないのか、先ほどの――」
 言いかけて、口を噤む。
 疑問が、頭の中を駆け巡る。
 覚えていないだと?
 ならば、私が見た過去はなんだというのだ。
 疑問だけが降り積もる。
 それらを解く軌跡を、景松は見出せない。
 ――だが、いずれにせよ。
「先ほどの衝撃の告白を」
 今の過去は、知らない方がいいことだ。
「えっ、なんなん!? 記憶飛ぶよーな告白ってナニ!?」
 騒ぐマリアに、疲労の色は見えない。
 彼女が人狼だからこそ、五行で強引に怯えを吹き飛ばしても動けるのだ。
 それを理解した上で五行を行った景松だが、心配せずにはいられなかった。
 表情には出さなかったが。
「今はやるべきことがあるだろう有馬」
 言いながら、景松は学生服の胸ポケットで震える携帯端末を取り出す。
 二つ折りの端末を開き、表示される文字を読み上げる。
「各地で妖物が発生。各隊員が『災害時特殊協力員』と協力して対応している。
 ここから最寄の発生地点は三宮交差点。現場に居合わせたユーイ、氷上、桐島が応戦中。
 ……あそこは人通りが多い。『災特協』の到着には時間がかかる」
 景松の前で、変わっていくものがある。
 一人の少女が、一人の戦士に。
「うちらも行くで」
「無論だ」
「よし、そんなら……」
 マリアが腰を下ろし、ブーツを脱ぎ始めた。
「何をしている」
 突然の行動に、景松は理解が追いつかない。
 元々理解の及ぶ相手ではなかったが。
 素足になったマリアが、黒のハイソックスをブーツの中に押し込め、立ち上がった。
「二人で走るより、あんた担いで跳んだ方が早いから」
 言うなり、マリアは景松の隣に回りこみ、足を払った。
 景松の身体が後ろに傾き、倒れるよりも早く抱きとめられる。
「おい……!」
「ほないくで、お姫様」
 軽い笑いと共に、マリアが跳ぶ。
 その足は獣毛に包まれている。
「靴を脱いだのはそのためか」
「そそ。あれお気に入りやから。そのまま獣詞変すると悲しいことになるねん」
 なら履くな、とは言わない。
 質素な生活を旨とする少女の、ささやかな贅沢だ。
「そんな大切な履物を放置してきてよかったのか」
「あー! ……とで取りに来るつもりやけど」
 半眼の景松と目を合わせず、マリアは跳び続ける。
 空白が生まれた。
 景松は追求せず、自己の思考に没頭する。
 疑問を順に並べていく。
 一つ、男――おそらくマリアの父――は、何者なのか。
 二つ、芦屋の矛を使っていたのは何故か。
 三つ、マリアを庇うように倒れていた“何か”の正体は。
 四つ、有馬・マリアは過去を見ていないのか?
 それらを解く鍵は、今のところ一つだ。
 芦屋だ。
 秘密主義の芦屋が、そう易々と教えるとは思えないが。
 尋ねる価値はある。
 考えをまとめ、不意に気付く。
 入れ込み過ぎだ。
 余所者であり、部外者であり、中道者であるはずの私が。





七幕

 三宮交差点。それは三宮周辺の施設同士を繋ぐ場所だ。
 人々の想いが交差するそこは、騒乱の渦と化していた。
 原因は地震だ。
 突然の揺れによって、四台の車が連鎖的に衝突し、それらの遺伝詞が乱れたのだ。
 結果として、四匹の灰色狼が、交差点に産み落とされた。
 不安と恐怖が、交差点を中心に流れている。
 その澱みの中を、進んでいく者がいる。
 一人の少女が毅然とした態度で戦場に突き進む。
 彼女の身を包むブレザーとロングスカートは、どちらも穢れなき純白。
 彼女の手に抱かれるのは、銀の輝きを放つ斧槍(ハルバート)型神具。
 彼女の目は、眼鏡越しに前方を見据える。
「運転手は無事に退避したよ」
 言って、彼女は声を飛ばす。
 飛ばした先に、一人の少年がいる。
 丸刈りの少年。
 戦闘用の学生服を着崩し、巨大なアームガードで左腕を武装している。
 少年は彼女に背を向けたまま、
「おうよ」
 と答える。
 少年の視線は、己の前に立つ狼の群れに向けられている。
 その動きに応じるように、二匹の狼が少年に向かって疾走を開始。
 狙いは少年の喉笛だ。
 だから、少年は笑った。
 声を上げず、表情だけで。
 円を描く軌道で、左腕を背後に流す。
 続けて、身体を前に傾け、沈める。
「援護いくよ太路(たいじ)!」
 少女の声を合図に、氷上・太路は飛び出した。
「頼んだぜユーイ!」
 少年の声を合図に、ユーイは斧槍を掲げた。
 その間に、太路と狼は距離を縮めあう。
 あと半歩で互いの攻撃範囲に入ろうかという時になって、太路が動きを見せた。
 右半身を後ろに引いたのだ。
「があッ!」
 咆哮と共に、アームガードで覆われた左腕を狼に向けて突き出す。
 打撃は狼に届かない。
 その時、アームガードに仕込まれた推進器が、火を噴いた。
 左腕ごと、太路の身体を引っ張る。
 左の拳が、一匹の狼の眉間に着弾した。
 動きはそれで終わらない。左手で狼の後頭部を掴み、右手で狼の腹を掴む。
 太路は左手首を軽く捻った。
 すると、アームガードの推進器が競り出し、百八十度回転した。前後が入れ替わった。
 その状態で、再びアームガードの推進器が火を噴く。
 掴んだ狼ごと、太路が背後へ跳ぶ。
 倒されなかった狼が太路に飛び掛ってくるが、空を掻くだけに終わる。
 太路は空中で身体を回転させ、倒した狼を投げ捨てる。
 捨てる先には、斧槍の切先を狼に向けたユーイがいる。
「聞いて。私の傍でたゆたう八万の遺伝詞たち、それから鋼鉄の呻き。耳を貸して。私の遺伝詞に」
 斧槍で狼を突き刺す。
 狼が、八の子犬に裂けた。
 続けざまに、ユーイが身体ごと斧槍を右に振る。
 気配を消して回り込んでいた残りの狼二匹を、遠心力を加えた斧槍で薙ぐ。
 薙ぎ飛ばされた狼は、コンクリートの大地に頭から落ちる愚を犯さない。
 しなやかな身体捌きで着地。再度ユーイに突進する。
 ユーイが斧槍を振り回す距離はもはやない。
 だが、ユーイは怖れない。
 狼の背後で一輪の花が舞い上がった。
 ユーイと同じブレザーと、ユーイと違う丈の短いスカートを纏った花だ。
 スカートの裾にある六つのアタッチメントに、それぞれ花弁が取り付けられている。
 銀の花弁だ。
 触れたものを切り裂く花弁が、風に踊る。
 花が風に運ばれ、狼の頭上を通り越す。
 甘い香りが、狼の鼻腔を掠め飛んだ。
 細く白い脚が、大地に根を下ろす。
 長く黒い髪が、風に流れ乱れる。
 暗く紅い唇が、喜悦に歪んだ。
 輝く蒼い瞳が、狼を映した。
「利雄!」
「リオとお呼びなさい!」
 ユーイの言葉に対し、抗議を込めた声で花が叫ぶ。
 利雄と呼ばれた花は、両手をスカートの前で交差させる。
 右手で左前部の花弁を、左手で右前部の花弁を、それぞれアタッチメントから分離。
 男のものとは思えない美脚が、惜し気もなく晒される。
 飛び掛ってくる狼に対し、花は答えた。
 咲き乱れたのだ。
 風に揺れ、自ら揺れ、敵を揺らす。
 六つの花弁が、二匹の狼を撫でる。
 花が風と一体になり、狼を巻き上げた。
 行き先は、ユーイの斧槍。
「私と共に在る十六万の遺伝詞、鋼の鳴動。聞いて! 私の遺伝詞を!」
 十六の子犬を産んだ風水は、まだ終わらない。
 ユーイに、もう一匹の狼が飛来する。
 振り向きざまに、斧槍を叩き込む。
 狼が、八つの子犬に変じる。
「よし」
 風水を終え、ユーイが額に浮いた汗を拭った。
「まるでドッグランだな」
 ユーイに最後の狼を放り投げた太路が、歩み寄りながら笑った。
「今ならもふもふし放題だよ。堅いけど」
 ユーイが屈み、灰色の子犬を一撫で。
「あらあら、私の脚にはっついてカクカクし始めたわよこの淫獣。私ったら罪な子……」
「うんうん、相変わらず罪深いね利雄。別ベクトルで」
 屈んだまま、身体の方向だけ利雄にずらす。
 灰色の子犬が、利雄の脚で元気に動いている。
「リオって言ってるでしょ。妬んでるのね地味眼鏡」
 前部の花弁を自身の両隣に突き刺した利雄は、顎に手を当てて高笑いを開始。
 ユーイの眼鏡に、利雄の脚が映る。
 ……妬んでませんよ、ええ、妬んでませんとも!
 心の中で己に言い聞かせながらも、ユーイの震えは止まらない。
「太路からも何か言ってやっ――」
「退けユーイ!」
 叫びと共に、ユーイは後ろから突き飛ばされる。
 屈んだままのユーイは、前のめりに倒れこむ。
 その軌道上にあるのは、青と白の縞模様を持つ逆三角形の布地だ。
「うぎゃー!?」
「イヤン」
 妙に生暖かく、軟らかいクッションがユーイの顔面を保護した。
 そのままドミノ倒しよろしく利雄を押し倒す。
 ユーイは己の尻に顔を擦り付けて倒れている太路に叫ぼうとして振り返り、息を飲んだ。
「こりゃでけーなー」
 尻の上で顔を捻らせ、太路が呟いた。
「元はトラックかしら」
 測るように手を伸ばして目を凝らすのは、利雄だ。
「暢気に言ってる場合じゃないって!」
 灰色の巨獣が、三人の背後にいた。
 全長六メートル以上ある類人猿が、巨木の如き豪腕を空に掲げた。
 転がるように三人は散開する。
 灰色の拳は、大地を穿つのみに終わる。
 三人は走る。進行方向は、敵の背後だ。
 逃げるためではなく、戦うための走り。
 それでも、驚きは隠せない。
「なんでゴリラが!?」
「別の場所で事故ったのがここの騒ぎ聞きつけて見学に来たとかじゃねーの」
「つまり私の美貌が」
「それはないから」
「なんですって」
「だってカマ」
「地味眼鏡」
「なにを」
「ふん」
 “普段通り”じゃれ合うユーイと利雄を横目に、太路は携帯端末を広げる。
「有馬副長と梶原副長補佐がこっちに向かっているらしいぞ」
 続く動きで、太路はユーイを見た。
 己を含め、皆の実力を過信せず、しかし“できること”に全力で取り組む友を。
「時間を稼ごう」
 ユーイの判断に、太路は強く頷く。
「おうよ」
「とは言え……」
 言葉尻を濁し、ユーイは敵を見る。
 灰色の類人猿は、緩慢な速度で回頭している。赤黒い瞳が求めるのは、三人の少年少女。
 少なくとも三人がここから逃げなければ、周囲への被害を抑えられる。
 その間に周囲の避難が完了し、副長たち、あるいは『災特協』のメンバーが到着すれば状況は攻勢に転換する。
 敵として認識されているため、時間稼ぎの条件は既に半分がクリアされている。
 だがもう一つの条件は、
「俺の拳通るかねえ」
「私の剣も怪しいわねえ」
 ユーイは、左右から向けられる視線に汗をかく。
「私に突っ込めって言うの!?」
 風水師という戦種故に、対人戦に特化した太路や利雄よりは妖物との戦闘にアドバンテージがある。
 ……だからって元トラックに突っ込ませる!?
「道は作るからよ」
 太路は白い歯を見せた。
「主役は貴女よ、リーダー」
 利雄は白い脚を見せた。
「なにいい空気作ってんのよ!?」
 利雄の脛に蹴りを放ち、ユーイは覚悟を決める。
 もんどりうつ利雄を放置し、早くも駆け出した太路に続く。
 太路の背に映る色は、喜。
「……男ってなんでこうなの」
「こっち見ろゴリラ!」
 大地を殴り、反動で太路は上方へ飛ぶ。
 類人猿の視線と、太路の視線が等しくなる。
 風が逃げた。
 追い払ったのは、灰の丸太だ。
 類人猿の右肩から伸びる丸太の動作は、今まで見せた動きの中で最も速い。
 描く軌道は下から上への半円。軌道上には太路。
 不可避の位置取りだ。
 ――太路・体術/脚術/腕術/回避技能・重複発動・躱し身・成功。
  ――太路・体術/脚術/腕術/盾術技能・重複発動・螺旋旋廻・成功!
 アームガードの推進器が火を噴き、太路は丸太に沿って螺旋を描く。
 ――太路・体術/腕術技能・重複発動・突撃・成功。
 与えた攻撃はしかし、
「硬ェなやっぱ」
 鉄の毛皮は厚く、太路の拳を無視した。
 ――太路・脚術技能・発動・飛び退き・成功。
 太路は追撃しない。
 それは類人猿の反撃から逃れるためであり、
 相手の破壊を目的としていないがためであり、
 彼の戦闘スタイルのためである。
 速さを乗せて猛進する。それだけだ。
 彼が通ったあとには、一つの路ができる。
 太い路だ。
 隙とも呼ぶその路を、ユーイは進む。
 天に伸びきった類人猿の右腕が降り切る前に、相手の懐を目指す。
 だが路の半ばで、もう一本の腕が繰り出された。
 ユーイを側面から薙ぎ払う、破壊の奔流だ。
 頬に突き刺さる風を感じながら、ユーイは走り続ける。瞳は相手だけを映している。
 ユーイの傍で硬質の音が六つ続いた。遅れて轟音が一つ。
 類人猿の左腕は、ユーイに届いていない。
 左腕とユーイの間に、六つの花弁が杭として穿たれ、ストッパーになっていた。
 花弁はユーイの背後から投じられたものだ。
「行きなさい!」
 六つの花弁こと『六篇白桜姫』を全て投じ、両足を露出させた利雄が叫んだ。
 叫びはユーイを押し上げる。
 類人猿の懐に入った。
「四方に満ちる十六万の遺伝詞たち。散りゆく大地の雫、頬を撫でる孤独の風! 聞いて、私の遺伝詞を」
 同時に斧槍をスウィング。
 砂埃と風の遺伝詞を操作し、十の風球を作る。
 風球は斧槍の動きを延長するように飛ぶ。
 それら全てが、類人猿の顔面に着弾した。
 風球が弾け、砂埃が類人猿の視界を奪った。
 攻撃は試みない。
 半端な攻撃では、相手の遺伝詞の乱れを大きくするだけだ。
 ユーイはすぐさまその場から引き返す。
 ヒットアンドアウェイだ。
 道中、利雄の『六篇白桜姫』を引き抜いて連れ帰るのを忘れない。
「このままいけば大丈夫……!」
 実力が拮抗している。
 故に、時間稼ぎの条件が全て満たされた。
 あとはこの繰り返しだ。
 ユーイがそう思考したときだ。
「困っているようだな!」
 よく通る男の声が、交差点に飛んできた。
 音の発生源は、交差点にある歩道橋の一つだ。
「誰!?」
 ユーイは類人猿に意識を置きつつ、わずかに視線をずらして歩道橋を見た。
 赤いマントを羽織った白の軽騎が、橋の柵上に立っていた。
 軽騎は、己を誇示するようにマントを広げ、高らかに宣言する。
 魂に刻まれし名を。
「『正義騎師(ジャスティス・ナイト)』クロスマン!」
 軽騎の背後で、白い爆発が上がった。
 それを機に、軽騎の両肩に備え付けられたスピーカーからBGMが大音量で放たれる。
 自作のテーマソングだ。
「柊・充次郎! 危ないから離れなさい!」
 流れを一切無視して、ユーイは軽騎に、否、充次郎に問いを投げる。
「否! 我はクロスマン! いざ正義執行(ジャスティス・エクスキューション)!」
 ユーイの制止を無視して、充次郎は闇雲に拳を振るう類人猿へ躍り掛かった。
 が、
「おおお……!?」
 偶然類人猿の拳が直撃し、充次郎は空を舞った。
 空気の糸を引き、隣の交差点に消える。
 かつての幼馴染の愚行を見たユーイは、眉を詰めて無言。
 ……御山堕ち、最弱騎師、嘘つき男(ブラフマン)。そう呼ばれるのが、そんなに嫌なの?
 ユーイがさらに暗い思考へ沈むよりも前に、太路が首を捻りつつユーイの前に駆け寄った。
 不思議そうに一人呟く。
「クロスマン……何者なんだ」
「いや柊だからぅひゃあ!?」
 背後から忍び寄った利雄に尻を抓られ、ユーイは悲鳴を上げた。
「ふふ、何を言っているのユーイ。彼はクロスマンよ。ク、ロ、ス、マ、ン……」
 ユーイの耳に、妙に艶かしい利雄の声が侵入してきた。
 背筋に冷たいものが走り、ユーイは何度も頷く。
「お利口さんねー」
 不意打ちで耳に息を吹きかけられたユーイが交差点に転がった。
「そろそろ目潰しの効果薄れてきたな」
 ユーイを無視して、太路は類人猿を見た。
「ユーイこんなだし、どうしようかしら」
「誰のせいだ誰の!」
 ユーイが怒りによってユーイは立ち直ったときだ。
「困っとるみたいやな!」
 よく通る女の声が、交差点に飛んできた。
 音の発生源は、交差点にある歩道橋の一つだ。
「今度は誰……って、ええー!?」
 ユーイは類人猿に意識を置きつつ、わずかに視線をずらして歩道橋を見た。
 橋の柵上に立っていたのは、有馬・マリアと梶原・景松だ。
 それは問題ない。それ以外に、問題があった。
 太路がユーイの驚愕を代弁する。
「エロゲぶら提げてお姫様抱っこされる男初めて見たぞ俺」
「何考えてるかわからない人だったけど、ますますわからなくなったわ」
 利雄はユーイを前面に置き、盾にしてから発言した。
「なんだかすっごい親近感湧くなあ梶原先輩……。関わりたくないけど」
 引き気味に笑うユーイの顔には、同情の色が強く映し出されている。
 三者三様の反応を受け取り、景松は狼狽した。
 マリアの腕の中で手を左右に振り、
「待て、違う! これはだな!」
 だが、景松の弁明を待たない者がいる。
 類人猿と、マリアだ。
「ほんなら行くでー。奥義! お姫様爆弾!」
 ――マリア・爆神/投擲/脚術/体術/腕術技能・重複発動・人間爆弾投射・成功。
 全身を使って『爆弾』を投げつける。
 ……おのれマリア!
 景松は心の中で舌打ちし、憤怒の感情を眼前の敵にスライドさせる。
 空中で神具を抜き放つ。
 類人猿が景松を捉えるために両の掌を左右から中央へ振った。
 直撃。
 景松を挟んだ掌は、景松の速度を奪った。
 その引き換えとして、類人猿は掌を失った。
 結果、マリアが込めた爆発の力を失い、ただの五行師となった景松が残る。
「詞変。二十四万詞階の遺伝詞よ」
 遺伝詞の見切りは一瞬だ。





八幕

 JR三ノ宮駅の前に、円形のベンチがある。
 普段であれば路上ライブが開かれ、色とりどりの音色が漂う場所だ。
 そんな華やかさが、今はない。
 つい先ほどまで、手前の交差点で騒ぎが起きていたからだ。
 静寂が、蔓延している。
 ベンチの中心にある時計台が、日を受けて影を作る。
 その影を右隣に置く形で、マリアは座っている。
 肩に紺色の戦闘用学生服を羽織るマリアが、裸足を前後に揺らす。
 視線は青く冷たい空に向かっている。
 静寂の下、小声で紡ぐのは、清しこの夜。
 歌声は静寂を打ち破らない。
 互いに共存し、共生する。
 明朗快活なマリアは、ここにいない。
 どちらかが偽者というわけでもない。
 これが、有馬・マリアという存在だ。
 不意に、マリアと冷ややかな空を断ち切る者が現れた。
 端正な顔が、マリアの顔を覗き込む。
「なにをしている」
「うちの代わりにブーツ取りに行ってくれた男待ってるとこ」
「違う。それを貸したのは脚に掛けるためだ。下半身を冷やすな」
 景松が、マリアの右隣、時計台の影に腰を下ろす。
 わざわざ影に座った景松を見て、マリアは苦笑。
 何気ない一動作に、彼の生き方が表れていた。
義母さん(ママ)みたいやな、アンタ」
「早く履け」
 マリアの前にブーツを並べ、景松はそっぽを向く。
「ありがとーな」
 感謝の言葉と共に羽織っていた学生服を景松の肩に掛ける。
 景松は顔を合わせない。
「ありがと、景松」
「聞いた」
 景松は顔を合わせない。
「前のは忘れもんへの礼。今のは諸々のフォローへの礼」
「それが私の役目だ」
 景松は顔を合わせない。
 声を上げずにマリアは笑い、靴下に脚を通す。
 冷えた布地が、肌を包む。
 同時に、温かいものがマリアの心を包んでいた。
 少しの間、衣擦れの音だけが続いた。
 音が止み、十秒経った。
 景松は顔を合わせない。
「もう履いたで」
「うむ」
 景松は顔を合わせない。
 後悔のようなものを、景松は抱いていた。
 本当に問いかけたかったことを、問いかけなかったからだろうか。
『違う。何故、そんな顔をしている』、と。
 顔を向けることも、問いを放つことも、もはやできない。
 全てはタイミングだ。
 それを私は逃したのだ。
 そんな景松の懊悩を、マリアは知らない。
「そういやさっき、柳田先生が来て三人連れて行きよったわ。『災特協』の打ち上げに行くとかどーとか」
「有能な三人だ」
 マリアの言葉に、景松は思考を切り替える。
 ユーイをリーダーに据えて行動する三人組。
 今は役職を持たないが、来年の今頃にはそれぞれが役職を受け継いでいるだろう。
「柊・充次郎のことは気がかりだが」
 ユーイが充次郎の幼馴染で、ユーイが充次郎を倒して連合入りしたことを、知らぬ者はいない。
 何も起きなければいいと思う。
「はぁ……」
 吐息し、マリアがブーツの踵をベンチの縁に乗せ、両足を抱えこんだ。
 膝頭に顎を這わせ、言葉を続ける。
「『団結は決断となりて』、か」
「なんだ? それは」
「こないだ柳田先生が口ずさんどった詞の一節。
 ええ詞やったから『先生のんですか』、って聞いたら、『誰かの失われた詞です』って言わはってな。
 ……みんなで仲良う力を合わせるんは、無理な話なんかなー」
 景松は答えようとしたが、すぐに取り止める。
 己の役目ではないからだ。
「……どうだろうな。私には断言できん」
「ニュートラル大好きやなぁ、あんた」
 マリアの声に失望の色はない。
 全て予定調和だ。
 ほんの少しだけ変革を望み、それ以上に変革を怖れる。
 そんな人間同士の遣り取り。
「聞く相手を選べ。直情型直進男に聞けば即座にできると断言するだろう」
 愚直、とも形容できる男を景松は知っている。
 苦手な男だ。
「それじゃすぐに話終わってうだうだ言えへんやん」
「つまり愚痴タイムなのか今!?」
 叫びを放つため、景松は振り向いた。
 笑顔のマリアが、眼前にあった。
 景松は勢いを失う。
 脳裏に諦観の思考が過ぎる。
 卑怯な。
 そんな顔をされては――。
 だが、悪くない諦めだ。人間諦めが肝心と言うし。
 故に、
「……たまになら付き合おう」
 降参のジェスチャーを示した景松を見て、マリアは勢い良く立ち上がった。
 慌てて顔を逸らした景松を指差す。
「ただ今をもって有馬・マリアは梶原・景松を秘密相談役に任じる。議題は『みんなで仲良くはしゃぐには』」
「議題って、愚痴を聞くだけではないのか!?」
「そんなんうちがスッキリするだけやん。もっと建設的にくっちゃべろーな」
 顔を向けては逸らす景松にマリアは疑問を覚えるが、放置。
 観念したように、景松が意見する。
「……イベントなどの口実があれば普段ばらばらの皆も集めやすいな」
「ならルミナリエで屋台出そか! 妖物退治もできるでかくて硬いやつ!」
「わかったから、とにかく座れ」
 それから二人は意見を交わす。
 他愛ない会話だ。
 しかしそれは副長と副長補佐ではなく、マリアと景松の会話だった。
 優しい時間が、半時ほど経った頃。
 二人が出せる意見も尽き、大まかな案が纏まった。
「ほな、そろそろ帰ろか。買いもんあるし」
 景松が頷き、立ち上がる。
「そうだな。私も父に夕飯を作らねばならん。……どうした座ったままこちらに手を伸ばして」
「おんぶー」
「子供か貴様は! 靴なら取って来ただろう! だからメール送信は禁止ぃ!」
 携帯端末を印篭よろしく掲げたマリアに、景松は無力化された。
 ユーイたちの反応を思い出し、それが幾度も繰り返されることを想像し、景松は決断した。
 マリアに背を向けて屈む。
「乗れ」
「よっこいせ。はーぬくぬく」
 マリアの膝裏に腕を通し、立ち上がる。
 首に触れるマリアの指先は冷たく、その身体は予想以上に軽い。
 景松は己の感情を五行。
「それで、どこへ行けばいい。道は知らんぞ」
「こっからやったら、生田神社の前横切って東の方にガーって行ってクルって回って――」
「逐一指示しろ」
「んー」





九幕

 生田神社は、三ノ宮駅から徒歩で少しばかり北西に歩いたところにある。
 駅から近いこともあり、神社には人の足が絶えない。
 その生田神社も、かつては別の場所にあった。
 砂山(いさごやま)
 今では布引山と呼ばれる場所で、松に囲われて奉られていた。
 しかし桓武天皇の時代、大洪水によって崩壊の危機を迎える。
 当時の神戸には大河川がなかった。地脈の澱みは着実に積もり、一気に表出した。
 大洪水とはつまり、大水流。その姿は大水龍だ。
 龍の仙女を生み出したのも、同じ布引山である。
 二つの違いは、器の違いだ。
 莫大な量の遺伝詞を飲む巨大な(うろ)を持つ少女がいたからこそ、龍は生まれなかった。
 神社を囲う松は、器に相応しくなかった。
 結果、大水龍が姿を顕した。
 それを救ったのが、刀禰・七太夫という名の男だ。
 七太夫が御神体を背負って下山したのだ。
 現在の生田神社があるのは、七太夫が神意を受けて立ち止まった場所だ。
 騒動の結果として、刀禰の一族は力を得、生田神社は洪水から社を救えなかった松を嫌った。
 それ故に、源氏と平氏が衝突した生田の森には、松がない。
「因果なものだ」
「なんか言うた?」
「いや」
 かぶりを振り、梶原・景松は前に進む。
 松を嫌う、生田神社へと。
 暫く歩いたところで、
「そういや、衝撃の告白ってなんなん?」
 一瞬理解が追いつかなかった景松だが、マリアの過去を見たことを誤魔化すために口走った言葉だと思い至る。
「ああ、それか。つまるところ私の好みの話だ」
 マリアの追及を回避すべく、喋りながら理由を作る。
「ほうほう、どんなどんな?」
 景松の目に、赤い鳥居が映る。
 生田神社だ。
 そこから連想するものを、理由に取り込む。
「慎ましやかな女性が大変好ましい。
 具体的に言えば、静かで、緩やかな曲線を持つ――生田総長などは」
 前半部分をマリアに言い聞かせるため、顔を向けてはっきりと大きな声で述べる。
 無防備すぎる少女に。
「あ、あ」
 マリアの顔が固まった。
 その目は、景松を見てはいない。
 景松はマリアの思考を現在の話題から遠ざけるため、興味を失うように言葉を吐き出す。
 内容を吟味せず、連想したものをそのまま言葉にする。
「彼女は完璧です。完全無欠のボディライン。
 あらゆる抵抗を無視する流れは、人類にとっての至宝。
 神域の形状。奇跡体言。無形美。
 すなわち貧乳! 品のある乳つまりは品乳!
 ダブルミーニングの双丘=存在しているが存在していない矛盾を孕んだOO(ダブルオー)00(二人のゼロ)!!」
 背中のマリアが震えていることに、景松は疑問を得る。
 感激したのだろうか。
 後半は言語野が暴走していたが、兎も角これで興味は逸れたはずだ。
 想い、信じ、
「う、うちは知らんで」
 マリアの視線の先に、景松は顔を向ける。
 誰かの拳が、視界に広がった。
 ――景松・心理技能・発動・意識維持・失敗!
 打撃された。





十幕

 夕刻。
 茜色の光を受けて佇む一軒家に、一つの音が生まれる。
 連続する騒音は、廊下にある黒電話が発生源だ。
 黒電話に近づく者がいる。
 藍色の作務衣を着た、総髪の男だ。
 男は受話器を持ち上げ、音を止める。
「はい、こちら梶原義肢製作所です。
 ……はい、はい、愚息が世話に……はい、いえ、滅相もない。
 至らぬところの多い男ですが、よろしくお願い致します。はい、はい……はい、それでは失礼」
 見えぬ相手に頭を下げ、男は受話器を置く。
 深い息を吐く。
「お使い放棄で美少女狼娘の介抱付きお泊りとは、景光の息子もなかなかやるね」
「音を殺して背後に立つなフェルナンド」
 金髪で白スーツの男が、総髪の男の首に細長い棒のようなものを突きつけていた。指揮棒だ。
「殺してなんかいないさ。黙っていてもらったんだ」
 男、フェルナンドが指揮棒を軽く振ってみせた。
「客間で待っていろと言ったはずだ」
「そんな音聴こえなかったよ」
 口の端を歪め、フェルナンドは笑った。
「申し出を受けるつもりは毛頭ない」
 男、景光は揺るがない。
「駄目かい?」
「貴様の指揮下に入るなど……吐き気がする」
「つれないな。昔はあんなに仲良く殺しあったのに」
 景光は無視した。
「あの時の僕らはクズだった。互い家を厭い、争いの中に飛び込んだ。僕が西、君が東」
 フェルナンドは構わず続ける。
「結局、両親を失った少年の叫び声を聞いて僕らは目が覚めた」
 景光は目を伏せた。
「僕らは互いにただ打ち合っていただけだったけど、その果てに何を生むのか知ってしまった」
 フェルナンドは構わず続ける。
「君は剣を捨て、剣を打つ道を選んだ。守るための剣を」
 景光は拳を握った。
「でもその剣は、君の兄の腕を絶ってしまった。君は剣を打つことも捨てた」
 フェルナンドは構わず続ける。
「それでも、だ」
「それでも私に五行師として力を貸せというのか!」
 怒声を、フェルナンドは甘んじて受け入れる。
「そうだ。憎んでもいい。だが力が欲しい。スロスミ」
 もはや誰も口にしない字で呼びかける。
「聞く耳持たん!」
「五行師が嫌いなのかい」
「無論だ」
 一瞬、フェルナンドが躊躇った。しかし続けた。
「景松もかい」
 景光の鼓動が乱れていくのを、フェルナンドは指揮棒ごしに感じ取った。
 激しい自己嫌悪の念に囚われるが、唇を噛むことで抑え込む。
 吐き捨てるように、景光が言った。
「あれは妻に似ている。だが、五行師の道を選んだ。言障も破壊できない、五行師の道をだ」
「だから彼を遠ざける、と。あんまりだよ、景光」
 殴られることを覚悟した上で、フェルナンドは言った。
 しかし景光は殴らなかった。
「そうだな」
 力なくそう答えた。
 続けて、フェルナンドに顔を向ける。
 フェルナンドの指揮棒は、すでに下げられている。
「大人になると、面倒だな。『災特協』現場指揮責任者」
 皮肉を込めた言葉に、フェルナンドは微笑。
「理想卿が表に顔を出さないから、仕事が全部僕に回ってくるんだ。
 このあとあの時の少年に会いに行くんだけど……」
「断るだろうな」
 断言し、景光は剣を捨てる切っ掛けになった少年を思い出す。
 両親を失い、近江寺に預けられた少年を。
 大地に横たわり、天に手を伸ばし、悲痛な叫びを上げる少年を。





十一幕

「知らん」
「そうか」
 昨日の妖物騒ぎの翌日、芦屋家の応接間で景松は芦屋・奏恵と向き合っていた。
 マリアの過去に関する疑問をぶつけた結果が、これだ。
 奏恵が知らない、と言ったということは、知ってはいけないということだ。
 今までの付き合いの中で景松が見出した法則だった。
 手編みのセーターに身を包む奏恵は、それ以上なにも言わない。
「邪魔したな」
 景松は引き上げることに決めた。
 畳の感触を足裏に得つつ、立ち上がる。
 奏恵に背を向け、襖を開ける。襖の前に、耳を前に押し出して聞き耳を立てる童女がいた。
 黒髪の童女だ。
 童女は飛び上がり、景松から遠ざかる。
「彼女は?」
知朱(ともか)。新しい式神だ。式神になるまでは蔵の中に篭もっていてな。
 人見知りが激しいんだ。カナが出掛けているから、人化させて代わりに家事を命じていたはずだが……」
 やれやれ、と奏恵は首を振った。
 童女の正体は、遺伝詞操作によって人の形をとった式神だった。
 名によって契約を結ぶ、人ならざる存在。
 景松にわかるのは、そこまでだ。
 契約方法も、なにも知らない。
「おい、梶原よ」
「なんだ」
 奏恵の問いに、景松は振り向いた。
 真剣な表情の奏恵が、景松を見ていた。
「あいつに惚れたか?」
 景松は突然の問いかけに、対応できなかった。
 それでも、なんとか言葉を搾り出す。
「……いいや」
「なら、教えられんな」
 奏恵が目を伏せ、腕を組んだ。セーターが衣擦れの音を立てる。
「からかっているのか?」
「私は本気さ」
 静謐が応接間に広がる。
 次に奏恵が目を開けたときには、襖は閉じられており、景松の姿はなかった。
「帰った、か。中道を気取り、母を思わせる存在を厭い、傷つくことを怖れる男が」
 悪態をつく奏恵だったが、応接間の窓へ視線をやる。
 窓の外では、奏恵と色違いのセーターを着た治が祟神を振り回している。
 治を見つめる奏恵の表情は、泣き笑いだ。
「ふん。傷つくことを怖れているのは、私も同じだな」





十二幕

「ただいま」
 緒ノ姫は、無言で景松を迎えた。
 景松は縁側に腰掛け、緒ノ姫を眺める。
 穏やかな音色が、そこに在る。
 その姿に、一人の少女の姿が重なる。
 静かな街で、小さく歌う少女。
 似ていた。
 あの人にも、似ていた。
「次こそは、守りたいものだ」
 言ってから、景松は気付く。
「違う、そうじゃない」
 己の言葉を五行する。
「似ているが、違う。ならば、この感情は……違う。」
 己の感情を五行する。
「私はやっぱり未熟だな、緒ノ姫」
 緒ノ姫は、語らず。
 しかし、景松は失念していた。
 五行された存在が、より強く再生することを。






出演人物

名前 梶原・景松
立場 中道者

名前 有馬・マリア
立場 迷える狼

名前 梶原・景光
立場 五行師嫌い

名前 フェルナンド・カンパネッラ
立場 指揮者

名前 ユーイ
立場 次期総長候補

名前 氷上・太路
立場 ユーイの右腕

名前 桐島・利雄
立場 ユーイの懐刀

名前 柊・充次郎
立場 嘘つき男

名前 生田・封戸
立場 黙殺巫女

名前 芦屋・奏恵
立場 芦屋家頭首

名前 知朱
立場 新参式神

名前 近江・治
立場 素振り男